樹林地という言葉があって、『東松山市みどりの基本計画』(2014年3月策定)巻末の用語解説では、「当該土地の大部分について樹木が生育している一団の土地で、樹林には竹林も含みます。」(77頁)とあります。『川越市環境行動計画「かわごえアジェンダ21」』(2008年3月策定)では、樹林地を「樹林が密生している場所であり植生により、自然林、二次林(雑木林)等に分類できるとともに、地形からは平地林、斜面林等に分類できる。」(20頁)としています。樹林地を漢字1字で示す場合、「森」と「林」とどちらが適切でしょう?
四手井綱英『森林はモリやハヤシではない-私の森林論-』第1部私の森林生態学に「森林はモリやハヤシではない」が収録されています(55~58頁)。

森林をモリやハヤシと読んだのは日本人だけだ。日本人は、古い時代に森をモリだと思い込んでしまった。しかし、中国語では「森」は「深」と同じ意味のシン(深い)という形容詞だった。森林はモリやハヤシではなく、「深い森」だったのだ。現在日本で名詞に用いている「もり」は形容詞だった。

森に名詞の「もり」という意味はない。だから、中国で「森林」をモリやハヤシだと言っても通用しないだろう。モリは名詞ではないから、中国や朝鮮半島に「森」という姓の人はいない。名が森という人はいる。名のほうは形容詞でよいからだ。だから、「林、森」という人はいる。動植物の命名法も同様だ。

次は「森」についてであるが、最近では森を林と同様に扱い「林へ行こう」というところを「森へ行こう」と書く人が非常に多い。しかし、日本の「森」という字は、林を言い表している語ではない。山の分類の一つだ。山にはいろいろな姿がある。山頂部が岩山になっている語は「岳」という。普通のなだらかな山頂を持っている場合は「山」と言うのが一般だが、山頂までぎっしり森林に覆われた山は「森」と呼ぶのだ。

ここから後の話は私の想像だが、なぜ山頂まで森林に覆われた山を「森」として「山」と区別したのか。考えてみると、そういう森林につつまれた山には神が住んでいた。すみかが神の山を区別するために「森」という山を区別したのだ。そして、「森」と言われる山は神のすみかとして大切に崇めていたのだ。

以上のべたのは、要するに「森林」はモリやハヤシではなく、「深い林」である。その意味を変えてしまったのは日本人だけで、中国や朝鮮半島では通用しないことである。そして、「森」は日本では長承まで森林に覆われた山の呼び名で、恐らくは神の住む所であって、平野部の人々は仰ぎ見て収穫を祈り、平穏な生活を願望したのであろうと思われる。

関東地方では平地の農用林を「ヤマ」と呼んでいるので「ヤマに行く」は「山に行く」だけではなく広く「樹林地に行く」、「林に行く」という意味で慣用的に使われている。「山に行く」を「森に行く」と置き換えられるのはまれな事だと思える。「森」ではなく「林」を使いたい。