12月23日の『朝日新聞』夕刊に「ブルブル木揺らし…松枯れ害虫優しく撃退 天敵と勘違い」という記事が掲載されていました。
 松枯れを引き起こすのにかかわる「マツノマダラカミキリ」を駆除する新たな方法を、森林総合研究所(茨城県つくば市)などのグループが開発した。鳥や動物などの天敵が歩く時の振動をまねて松の幹を揺らすと逃げ出すという。殺虫剤を使わない環境に優しい方法だ。
 研究所の高梨琢磨・主任研究員によると、マツノマダラカミキリは1秒間に100回程度の振動にとても敏感だという。6本の足の太ももに木から伝わってくる振動を感じる感覚器官があり、天敵のキツツキなどが近づくと感じる。
 研究チームは数年前から、この振動を与える円筒形の装置(直径約5センチ、長さ約20センチ)を国内メーカーと開発してきた。松の幹にベルトをつけ、カミキリ10匹の様子を調べた。
 2時間後、装置を取り付けなかった幹にはカミキリはそのままいたが、取り付けた幹では平均4割が逃げた。また、松の丸太に一晩メス6匹をつけたところ、振動を与えなかった丸太には産卵したが、振動を与えると全く産卵しなかった。
 カミキリが松の樹皮を食べると、そこからカミキリ体内にいた線虫が侵入し、根からの水を通す管を詰まらせて松枯れが起きる。被害は全国に広がっている。殺虫剤でカミキリを駆除する対策が主流だが、環境への影響が心配されている。
 高梨さんは「松1本に装置1個で十分な効果があり、市街地の公園などでも安心して使える。数年以内に安価で小型な装置を実用化させたい」と話す。振動による駆除法はトマトの害虫「コナジラミ」などにも効くとみて、開発を進めている。(三嶋伸一)
         [朝日新聞DIGITAL 2018年12月23日08時48分
ネットで検索してみると、11月10日に共同通信社が「松の害虫、振動で寄りつかせず 薬剤減らす対策に新手法」を配信し、『沖縄タイムス』、『京都新聞』、『佐賀新聞』など地域紙が記事を転載し、『毎日新聞』は11月22日に「森林総合研究所 小刻みの振動、松の害虫回避 新手法開発」をデジタル版に掲載していました。松枯れの原因として記事にある「根からの水を通す管を詰まらせて」とか「松が水を吸えなくなる」とかの説明でよいのでしょうか。松枯れ病は「マツの体内で線虫(マツノザイセンチュウ)が増殖し、水を運ぶ仮道管に障害が起こることで、マツが枯れてしまう」病気ですが、そのメカニズムについて再度、学習してみたいと思いました。

マツノマダラカミキリを寄せ付けないで産卵を抑制して増殖率を抑える新手法
農薬を散布することでカミキリを駆除する方法は、周囲の生物にも影響を与え、生態系を破壊してしまうことが懸念されています。そこで森林総合研究所の高梨琢磨さんたちが着目したのが、カミキリがマツの木に伝わる天敵の振動を察知して逃げるという行動です。カミキリが脚にある感覚受容器で振動を感知して不動化するメカニズムが明らかになり、天敵が発する振動をマツに与えることでカミキリを駆除する小型の振動発生装置を数年間かけて国内メーカーと開発、実用化の目途が立ったようです。


※日本木材学会 組織と材質研究会 2014年秋季シンポジウム『樹木と昆虫のインタラクション ̶ 樹幹加害の多面的理解ー 』(2014年9月18日)

荻上チキ Session-22(TBSラジオ)の2014年10月放送「積水化学の自然に学ぶものづくり」(ゲスト:高梨琢磨さん)①「超音波とはどういうものなのか」、②「なぜ、昆虫が振動・超音波を発するのか?」、③「松枯れを起こす害虫マツノマダラカミキリ」、④「虫よけ技術の秘密兵器」

※森林総合研究所研究成果2017年紹介「振動でカミキリムシが不動化するメカニズムを解明