2013年度厚生労働省委託事業「林業に新規参入する労働者に係る労働災害防止対策推進事業」報告書』(株式会社森林環境リアライズ、2014年3月)は全7章、本文127頁ですが、イラスト・写真類も多数掲載されて読みやすい報告書です。「第5章 実地検証後の報告書」(84~110頁)については節・項・目まで詳細な目次を紹介しています。
 なお、前年に発行された『林業に新規参入する労働者のための安全な作業のテキスト』、『安全作業に必要な作業計画の作成支援』(株式会社森林環境リアライズ、2013年1月)は、株式会社森林環境リアライズHPの「[厚生労働省委託事業]林業に新規参入する労働者に係る労働災害防止対策推進事業」ページの「林業に新規参入する労働者のための「安全な作業のテキスト」及び「安全な作業に必要な作業計画書の作成支援」についてからダウンロードできるのであわせて目を通してもらいたいと思います。
平成25年度厚生労働省委託事業報告書表紙
まえがき
 森林林業における労働災害の発生状況は、中長期的にみると減少傾向にあるものの、他産業に比べると発生率が高い水準で推移しており、災害の程度も死亡災害など重篤な災害の割合が高い状況にある。また、長引く木材価格の低迷の中で生産活動による利益を上げるため、コスト低減や高い労働生産性を求めるあまり、安全対策が十分講じられず労働災害の危険性が高まりかねない状況にある。
 近年の死亡災害の内訳をみると、①間伐作業中における災害、②不適切な方法による「かかり木」処理中における災害、③複数の林業労働者の近接作業が原因の災害が多くなっている。また、林業機械の普及等により、車両系の林業機械の転倒、転落や周囲の労働者を巻き込む災害が多発している。
 本事業は、林業に新規参入する労働者に係る労働災害防止対策推進事業の一環として、安全性能の高い保護具着用の徹底等の諸外国の先進的な林業労働災害防止対策の調査・検討と、検討結果に基づく対策の実地検証の実施により、林業における労働災害防止対策の推進をはかることを目的に取りまとめた。
章立て
1. 事業の概要
2. 事業の実施計画
3. 先進的な林業労働災害防止対策の検討
4. 検討結果に基づく対策の実地検証
5. 実地検証後の報告書
6. 留意事項およびその他
7. 林業機械等の検討課題の抽出と検討方針等について

詳細目次
1. 事業の概要
 1 . 1 事業の目的と内容
2. 事業の実施計画
 2 . 1 事業の実施方針等
 2 . 2 事業項目等
 2 . 3 各項目の実施内容
 2 . 4 事業実施に伴う提案事項
3. 先進的な林業労働災害防止対策の検討
 3 . 1 林業作業に伴う安全な服装と保護具
 3 . 2 チェーンソーによる安全な伐木作業指針
 3 . 3 かかり木処理作業
 3 . 4 集材作業
 3 . 5 林業労働災害防止対策検討委員会
4. 検討結果に基づく対策の実地検証
 4 . 1 実地検証対象事業場の選定
 4 . 2 実地検証用調査票作成
 4 . 3 実地検証の実施
  1) 実地検証事業場の事業規模等
  2) 実地検証事業場の林況等
  3) 実地検証事業場の作業システム等
  4) 実地検証概況
 4 . 4 実地検証結果
  1) 安全な服装と防護具の装備
  2) 手工具の管理とチェーンソーの大きさ等
  3) 伐木作業に伴う安全確保およびチェーンソー取り扱いの基本
  4) 欧州等の安全な伐木方法の取組み
  5) 造材作業に伴う安全確保および枝払いの基本
  6) かかり木処理作業の実態

5. 実地検証後の報告書[84~110頁]
 5 . 1 安全な作業の基本
  1)林業作業に伴う安全な服装と保護具の装着
   (1)作業用衣服
   (2)防護・防振手袋
   (3)安全靴等
   (4)チェーンソー等林業作業のための防護衣等
   (5)保護帽・保護網・保護眼鏡および防音保護具
    参考:保護具の性能と切断に関する保護性クラス

  2)手工具の管理と使用方法
   (1)手工具の種類と主な作業項目
   (2)林業機械・器具の種類と主な作業項目
   (3)機械・器具の整理整頓と点検整備
   (4)安全な持ち運びと現場における管理
    参考:クサビの種類
    参考:トビ・ツルの使い方

 5 . 2 伐木・造材作業
  1)伐木作業に伴う安全の確保
   (1)伐木作業前の準備
   (2)伐木作業に伴う立入り禁止区域および伐木者の退避

  2)チェーンソー取り扱いの基本
   (1)チェーンソー作業時の立入禁止区域
   (2)チェーンソー取り扱いの基本

  3)伐木作業の基本
   (1)受け口切り
   (2)追い口切り
   (3)クサビの打ち込み
   (4)つるを適切につくる
   (5)伐木

  4)先進的なチェーンソー伐木技術の取り組み
   (新規就労者の安全なチェーンソーによる伐木技術)
   (1)取り組みの目的
 ① チェーンソー用防護ズボンの安全性は、ガイドバーが長いと防護クラスに対応した安全性は保障されない。このため、ガイドバー45cm 程度のチェーンソーで伐木する技術の体系化が必要である。
 ② 日本国内ではクラス1(最低限の性能)の防護ズボンが広く普及しているため、ガイドバー45cm 程度のチェーンソーの使用が望ましい。
 ③ ガイドバーが短く重量が軽いチェーンソーは、取り扱いやすく安全な作業が行える。また、重量が軽い出力3.5kW程度のチェーンソーは、燃料消費が少ないので手持ち資材も軽いなど労働負荷の観点からも、ガイドバーが短いチェーンソーの使用が望まれる。
 ④ 特に、新規就労者はチェーンソーの取り扱いは未熟のため、取り扱いやすいガイドバーの短いチェーンソーの使用が望ましい。
   (2)20 ㎝以上の伐木の一般的な伐木方法(オリエンテーションカット)
 オリエンテーションカットは、近年、ヨーロッパの林業専門作業員の伐木方法のスタンダードとして指導教育される方法である。受け口、つる幅・高さ、追い口切りの基本は、国内の基準と同様である。
 伐木方法の特徴は、伐木の安全作業を向上させるため、伐木方向づけ(オリエンテーション)を確実にするために、【①受け口の直角方向の側面を切り落として、つる面と側面を四角に整形して伐木する。】【②つるの幅と高さを厳守させるために、切り落とした側面につる幅と高さを木材チョークなどで(熟練者はチェーンソーの刃を使用)印をつけて、その目印を基準に伐木する。】
 なお、側面の切り落としは、国内の一般的な根張り切り(根元切り・斧目)に類似するが、オリエンテーションカットは、つる幅と高さを基準に幹部を四角に整形する作業であり、根張り切りとは異なる方法である。
   (3)伐木径直径約20 ㎝以下の場合(オープンフェイスノッチカット)
 オープンフェイスノッチカットは、ヨーロッパや北欧における小径木(胸高直径20cm以下)の伐木方法として広く普及する。国内の小径木の切捨て間伐等の伐木は、簡易な受け口を取り、一気に伐木することが多い。このため、かかり木の発生が多く、径級が細いことから、投げ倒し(あびせ倒し)や元玉切りを安易に行うことが散見され、重大事故の招く要因となっている。
 オープンフェイスノッチカットの特徴は、伐木時に人が押してコントロールできる20cm 以下の径級の立木のかかり木を避けるため、正しい伐木方向に倒すことを目的とした技術である。
 なお、オープンフェイスノッチカット(広角受け口)は、「伐木造林業務従事者必携-安全衛生教育用テキスト-(林業・木材製造業労働災害防止協会)」により、伝統的受け口伐木方法より安全度が高く、高い精度で伐木方向が決まる。また、元口の跳ね上がりと制御不能な動きを減らすことが出来ると紹介される伐木方法である。
   (4)腐朽木の伐木
 伐根部分が腐朽している木および凍裂などの被害木の伐木は、つるやクサビが均一に機能せず伐木方向が変化したり、伐木中に幹が裂けたりして非常に危険である。

   (5)伐木に伴う安全作業のまとめ

  5)造材作業の基本
   (1)造材作業に伴う安全の確保
   (2)枝払い作業の基本【大径木および太い枝の樹種(広葉樹)の場合】
   (3)枝払い作業の基本【小径木および細い枝の樹種(針葉樹)の場合】

  6)玉切り作業の基本
   (1)作業の基本
   (2)片持ち材、橋状の材の玉切り
   (3)クサビの使用例
   (4)小径木の玉切り方法
   (5)中~大径木の玉切り方法

 5 . 3 かかり木処理作業
 かかり木の処理は伐木作業の中でもっとも危険な作業である。かかり木処理については「かかり木の処理の作業における労働災害防止のためのガイドライン」を基本にして、事前に適切な処理方法を学び、適切な機械器具を使用して処理する。
  1)安全なかかり木処理作業
   (1)事前調査と準備
   (2)確実な合図と退避
   (3)適切な処理方法
    参考:欧州のかかり木処理方法

  2)かかり木処理の禁止事項
   (1)かかられている木の伐木の禁止
   (2)投げ倒し(あびせ倒し)は禁止
   (3)かかっている木の元玉切りは禁止
   (4)かかっている木の肩担ぎは禁止
   (5)かかられている木の枝切りは禁止

  3)止むを得ない場合の危険区域の設定
(1)かかり木が発生した場合は、できるだけ速やかに処理する。
(2)やむを得ず放置する場合は、危険区域に他の作業者が立ち入らないよう、標識の掲示、縄張りなどの立入禁止の措置を行う。
 5 . 4 集材作業
  1)架線集材
   (1)作業開始前の点検
   (2)安全な荷かけの方法

  2)安全な荷かけ・荷はずし作業の方法
(1)架線集材作業では合図と退避が必須条件で、指差し呼称して運転者に合図する。
(2)張力がかかっているときのロープの内角作業は行わない。
(3)同一斜面の上下作業は行わない。半地引き集材では斜面上部から、転石・切り捨てられた端材などが落下するため注意する。
(4)引戻索の台付け索が切れた場合、ワイヤーはバネのように跳ねて転石・枝・切り捨てられた端材を跳ね飛ばすので注意する。
(5)ロージングブロックが停止してから荷かけを行う。
(6)荷の巻上げ後、すぐに主索の直下に入らない。また、主索の下の荷の落下などのおそれのある箇所では作業しない。
  3)車両系集材
   (1)作業開始前の点検
   (2)安全な荷かけ作業の方法
   (3)無理な荷かけはしない
   (4)集材作業の注意事項
   (5)荷かけ作業の禁止事項
    参考:チェーンおよび可動式チョーカーフック

6. 留意事項およびその他
 6 . 1 事業効果の把握
  1) アンケート様式
  2) アンケート結果

7. 林業機械等の検討課題の抽出と検討方針等について
 7 . 1 林業機械の安全基準及び安全な作業
 7 . 2 伐木、造材等の見直しについて
 7 . 3 路網整備関係の安全作業
 7 . 4 木質バイオマス燃料生産機械の安全基準および安全な作業について
 7 . 5 林業機械等の検討課題のロードマップ

※『東京都保全地域保全活動ガイドライン=東京の自然環境を次世代に伝えるために=』(1918年)をはじめ、里山保全活動や作業に関わるガイド、マニュアル類は自治体から種々発行されています。森づくり安全技術・技能全国推進協議会からは『森づくり安全技術マニュアル』(基本編・動力機械編・応用作業編・指導編)が発行されており、1冊2,000円の寄付で入手できます。
 市民の森保全クラブの現場作業はチームで行っています。チェンソー、刈払機を使っている、使っていないにかかわらず、全会員が「無理なく・楽しく・安全に」里山保全活動が続けられるように、これらのテキストを自習するとともに集団で研修する機会を設けて認識を深め、現場活動で体得していきたいと思います。
※「保全作業の安全確保」(2018年12月22日記事)