富山和子さんの『森は生きている』(1981年発行の講談社版)を読みました。東京書籍の小学校5年生の国語教科書(下)の「森林のおくりもの」は、本書第1章「日本は森の国です」を基に,教科書用に書き下ろされたものです。

  富山和子『森は生きている』目次
〈おくりものがいっぱいです〉

日本は森の国です
 木のくらし
 木はどのようにつかわれたでしょうか
 木は生きものです
 紙のおくりもの
 火のおくりもの
 水と土のおくりもの

山国の人たち
 森林は人間がそだてました
 山国の人たちは、心のやさしい人たちでした
 山はとてもにぎやかでした
 山は神のすむ場所でした
 植林のはじまり

森林のはたらき
 森林は風をふせいでくれました
 森林は雪もふせいでくれました
 森林は気温を調節します
 森林は火事をふせいでくれました
 海岸林は国土をつくってくれました
 森林は海のさかなもやしなってくれました
 森林は風景をつくりだしてくれました
 外国の森林の歴史

土こそが人間を守る
 もしも山に人がいなくなってしまったら
 土こそが人間を守る

あとがき
 ……この「森は生きている」で、森林のもつさまざまな働きをさらにくわしく学び、自然をまもるとはどういうことかを、考えてほしいとねがったのです。
 歴史的にものを見るということは、大切な科学の方法です。ましてこの国土の自然を語る場合、歴史の眼を抜きにしては語れません。
 森林の偉大さとは、つまるところ土壌の形成者であるという点につきます。その土壌こそ、人間の労働の産物だったのです。木ばかり見ず、土を見なくてはなりません。土を養ってきた人間の歴史を見なくてはいけません。
 すでに「川は生きている」は多くの専門家も大人も読んで下さり、大学でもテキストに使っていただいています。同じようにこの「森は生きている」も、大人のみなさんにも読んでいただきたいとねがっています。心理はつねに、身近かなところにあります。子供も大人も共通して読める本を書くことのしあわせを、この三部作【『川は生きている』、『道は生きている』、『森は生きている』】をとおして私は教えられたのです。