生源寺眞一『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる 高校生からの食と農の経済学入門』(家の光協会、2010年)を読みました。高校生から大学低学年の年齢の若者を想定して、世界の食料、日本の農業、そして毎日の食生活の三つの場面のつながりを、授業形式で判りやすく伝える本。3月末に改訂(新)版が出たそうです。

ホームルームの時間 授業を始める前に

1限目 食料危機は本当にやってくるのか?
 食料事情を左右する三大穀物と大豆
 「食料」と「食糧」
 何が食料価格高騰の原因か
 楽観論が後退した食料の見通し
 伸び悩む穀物の収穫量
 豊かになると穀物を食べなくなる
 食料は単純な予測の問題ではない

2限目 「先進国=工業国、途上国=農業国」は本当か?
 10億人が栄養不足
 「途上国=農業国、先進国=脱農業国」は正しいか
 食料を大量に輸入する日本は特異な国か
 広がる先進国と途上国の農業力の差
 低賃金でも優位に立てない途上国農業
 「緑の革命」にノーベル平和賞
 食糧不足のアフリカに必要なのは「虹の革命」
 農業保護で対立したアメリカとヨーロッパ
 農産物貿易をめぐる新たなルール作り
 先進国の農業保護を途上国が批判するわけ

3限目 自給率で食料事情は本当にわかるのか?
 食料自給率はひとつではない時代によって違う自給率低下の原因 ほか)
 時代によって違う自給率低下の原因
 自給率98%なのに栄養不足?
 大切なのは自給率より自給力
 安定した社会に欠かせない食料安全保障
 万能ではない市場経済と事由貿易
 問題は行きすぎた農業保護
 自給率に現れた日本農業の特徴

4限目 土地に恵まれない日本の農業は本当に弱いのか?
 土地が限られた日本にも元気な農業がある
 気がかりなのは飼料や燃料の価格
 世代交代が進まない土地利用型農業
 日本農業のシンボル=水田が消える?
 10ヘクタールは大規模か
 土地利用型農業の活路となる3つの工夫
 多彩なメンバーが支える農村コミュニティ

5限目 食料は安価な外国産に任せて本当によいのか?
 外国産が国産より安いのはなぜか
 日本に農業が必要なわけ
 お金に換算できないところに農業の価値がある
 いのちと向き合う面白さと難しさ
 もうひとつの宝は農村コミュニティの共同力
 遠くなった農業の現場
 真に豊かな食生活とは
 距離の拡大で見抜きにくくなったインチキ
 広がる農家の情報発信
 農業・農村との接点を取り戻す
 君自身が始める食と農の旅

授業を終えて 少々長めのあとがき