白井信雄さんの『図解 スマートシティ・環境未来都市 早わかり(1時間でわかる)』(中経出版、2012年12月)を読みました。
はじめに 「都市縮小」時代の未来都市構想
第1章 なぜ未来都市構想が必要なのか
第2章「スマートシティ」構想とは何か
第3章 「環境未来都市」構想とは何か
第4章 未来都市の「シナリオ」を描く
第5章 理想的な未来都市「サステナブルシティ」
第6章 「サステナブルシティ」では、ここが変わる!
おわりに
参考文献
はじめに 「都市縮小」時代の未来都市構想
プロローグ2030年「未来都市の暮らし」はこうなる!
20年後の未来都市から「近況レポート」が届いた!
2030年×月×日/僕の住む街が「住みたい街ナンバーワン」になった!/わが家は「スーパーエコハウス」/わが家のエネルギーを管理・制御する「エコブレイン」/都心の本社に通うのは「週2日だけ」/都心への通勤も「混雑なし!」/車をコミュニティで共有する/家中の家電製品がリース商品/「レンタル農園」で野菜づくり/年齢の壁を越えた地域の「サークル活動」/気象災害・大震災に備える
第1章 なぜ未来都市構想が必要なのか
都市が抱える弱点・リスクを洗い出す!
1 東日本大震災が日本を変えた!
東日本大震災が社会・経済・都市の問題を浮き彫りにした
いまや、どの地域も自然災害を避けることはできない
これまでの価値規範を見直す契機になる
都市の基盤の弱さを思い知らされた
東日本大震災が3つの変化をもたらした
東日本大震災が加速させる「社会革命」
変化1:エネルギーの転換
変化2:拡大成長志向からの脱却
変化3:国家・企業が主導する社会から市民が主導する社会へ
2 都市は脆弱さとリスクを抱え込んでいる
都市が抱える脆弱さとは?
1:面積当たりの活動密度が高い
2:外部依存度が高い
3:人間関係の希薄さ
都市が抱えるリスクとは?
1:自然災害か人為災害か
2:影響が短期的(突発的)か長期的(慢性的)か
3 都市は3つの危機に直面している
危機1:エネルギーが枯渇する
生産量が増え続ければ可採年数は短くなる
価格上昇が大問題になる可能性がある
危機2:温暖化が進行する
二酸化炭素排出量を削減する「緩和策」が求められる
気候変動の影響を最小にする「適応策」が求められる
危機3:少子高齢化が進行し都市が縮小する
50年後には生産年齢人口が激減する
スラム化、治安悪化が深刻化する
都市の再編成が求められる
第2章「スマートシティ」構想とは何か
その動向と死角をガッチリつかむ!
1 「スマートグリッド」を中核として街をつくる
「スマートグリッド」とは何か
「スマートシティ」計画には2つのタイプがある
タイプ1:新興地型スマートシティ計画
タイプ2:既存大都市型スマートシティ計画
2 産業界が大注目する「スマートシティ」
日本の「スマートシティ」構想の狙い
電力の需要・供給の効率化を図る
スマートシティ・ビジネスの可能性を探る
「スマートコミュニティ」の実証事業も進む
すべてのインフラを総合的に管理・制御する
海外の「スマートコミュニティ」づくりにも参加
実際には「スマートハウス」「スマートビル」が主流
現場で需給調整するのが基本
どのようなシステムが需給調整に用いられるか
「スマートシティ」のシステムを多様な用途に使う
3 「スマートシティ」構想には2つの死角がある
実際の導入にはもう少し時間がかかkる
死角1:ソフトウェア、ヒューマンウェアのデザインが不足
死角2:住民不在、企業主導で進んでいる
第3章 「環境未来都市」構想とは何か
その動向と死角をガッチリつかむ!
1 先行する「環境モデル都市」の取組をみる
「環境モデル都市」とは何か(2008年13都市が指定される)
低炭素社会都市の実現を目指す
経済・社会システムづくりにも取り組む
地域の個性をふまえた「環境モデル都市」計画
事例:環境モデル都市・飯田市の取組
「積み重ね」と「地域ぐるみ」が指定の決め手
時代を先取りした市民共同発電事業
2 少子高齢化にも取り組む「環境未来都市」
「環境未来都市」とは何か
人間中心の新たな価値を想像する都市(2011年11都市が指定される)
究極の目的は「人々の生活の質を向上させる」こと
ほかの未来都市構想とは、ここが違う!
環境・エネルギー面はほとんど同じ方向性
少子高齢化に取り組む
多様な地域課題に取り組む
3 「環境未来都市」構想には3つの死角がある
従来のビジネスのやり方を踏襲するだけでは成功しない
死角1:環境・社会・経済の連携に欠ける
死角2:未来を共有する人づくりに欠ける
死角3:周辺地域との連携に欠ける
第4章 未来都市の「シナリオ」を描く
わが街をどのような個性の街にするか・その選択肢は?
1 どういう社会を目指すか
「高度技術型社会」か「自然共生型社会」か
「ドラえもん・シナリオ」と「サツキとメイ・シナリオ」
事例で見る2つのシナリオ
「高度技術型社会」のシナリオ事例
「自然共生型社会」のシナリオ事例
2 将来をどう想定・設定するか
将来をどう設定するかで都市デザインは変わる
経済・社会の両面で将来状況を設定する
事例:実際に「30年後のビジョン」を検証してみた
複数のシナリオを想定する(ロバスト)
第5章 理想的な未来都市「サステナブルシティ」
理想的な未来都市に必要な原則基盤は何か
1 「サステナブルシティ」の3つの原則
「サスティナブルシティ」とは何か
原則1:将来および他地域との共生
「持続可能性」についての考え方の流れ
持続可能性とは「他者に配慮すること」
原則2:起こり得る危機への適応
「社会の弱いところ」を改善する(脆弱性)
「感受性」を改善し「適応能力」を強化する
都市の「脆弱性」の「根本要因」を改善する
原則3:住民の参加と活力
企業・行政だけではサステナブルシティは実現できない
住民の多様なタイプに配慮する
2 「サステナブルシティ」の3つの基盤
基盤1:「ハードウェア」 最先端の科学技術
未来都市をつくる科学技術はいつ普及するか
未来を見通しハードウェアを整備する
基盤2:「ソフトウェア」 行政制度
さまざまな施策・手法の組み合わせが求められる
地域が主体的に施策・手法を工夫し生み出す
基盤3:最も重要な基盤「ヒューマンウェア」
「ヒューマンウェア」とは何か
今後、社会貢献意識、環境意識がさらに高まる
「社会関係資本」への関心が高まる
ビジネス・チャンス:ヒューマンウェアを組み込んだビジネス
第6章 「サステナブルシティ」では、ここが変わる!
「サステナブルシティ」の全貌とビジネス・チャンス
1 エネルギー・システムが変わる
エネルギーは「再生可能エネルギー」にシフトする
大都市は他地域からの再生可能エネルギーを調達しなければならない(賦存状況に差)
電力の自由化が進む
再生可能エネルギーに地域の個性が反映される
蓄電システムが普及する
余剰電力が蓄電される
非常用電源として蓄電する
ビジネス・チャンス:電力の卸売り・小売りビジネス
市民共同発電が推進される
市民が出資し発電所を建設・運営する
長野県飯田市の「おひさま進歩エネルギー」事業
環境省平成のまほろば・まちづくり事業補助金
ビジネス・チャンス:市民出資によるビジネス
2 交通システムが変わる
未来都市を走る自動車は「エコカー」
エコカーがさらに進歩・普及する
未来都市を走る自動車の種類が限定される?
車交通を制御するITS(高度道路交通システム)が普及する
情報ネットワークを活用するITS
「ロードプライシング」で市街地に流入する車を減らす
ビジネス・チャンス:ITSを活用したビジネス
3 不動産が変わる
未来都市に求められる「サステナブル不動産」
「サステナブル不動産」とは何か
新丸の内ビルディング、パークシティ柏の葉キャンパス二番街
「サステナブル不動産」の6つの効果
収益が向上し、イメージもアップ!
入居者の満足度が高く、エネルギー・リスクも軽減
ビジネス・チャンス:「サステナブル不動産」ビジネス
4 災害への対応が変わる
レジリエンス(災害適応力)が求められる
避けて通れない自然災害
「レジリエンス」とは何か
災害などの影響を回避したり、最小化する能力
こうしてレジリエンスを高める
土地利用の再構築・再編を行う
災害のモニタリング、予測・警報システムを整備する
ビジネス・チャンス:レジリエンス・ビジネス
5 生活スタイルが変わる
「テレワーク」が普及し通勤地獄から解放される
3つに分類できる「テレワーク」
在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務
現在も増加し続けるテレワーク
テレワークの効果・メリットは?
テレワークを標準化させるための課題
ビジネス・チャンス:テレワークに付随するビジネス
複数の居住地を持つ人が増える
情報通信技術が進歩し、居住地の選択肢が増える
複数の居住地を住み分ける
ビジネス・チャンス:マルチハビテーション・ビジネス
“癒しの里やま”で健康づくり
補完代替医療で事前治癒力を高める
都市の中に“癒しの場”をつくる
里山での健康づくりプログラム
「サービサイジング」が注目される
「サービサイジング」とは何か
サービスを売る、レンタル、リース、シェアリング、ネット配信
リデュース(減量化)・リユース(再使用)が盛んになる
カーシェアリングが盛んになる
ビジネス・チャンス:最も注目される「シェアリング・ビジネス」
「サスティナブル・ポイント」が登場する!?
環境に配慮すると、ご褒美がもらえる「エコポイント制度」
「エコポイント制度」には2つの設定方法がある
取得メニュー、還元メニューをどう設定するか
サステナビリティにこだわる「サステナブル・ポイント」
原則1:将来及び他地域との共生
原則2:起こり得る危機への対応
原則3:住民の参加と活力
6 人とのつながりが変わる
住民コミュニティはサステナブルシティの「基盤」
コミュニティのつながりが強いほど環境配慮意識も高い
事例1:省エネ・エコに徹底的に取り組む「柏の葉キャンパスシティ」
マンネリ打破の秘策は?
事例2:つながりと出会いを生む「お薬師さんの手づくり市」(仙台市)
高度情報化社会では、リアルな場所の魅力・価値が問われる
自分のつくったものでなければ出品できない
コンセプトは「つながりと出会いを生み出す」こと
過去と現在、未来がつながる「お薬師さんの手づくり市」
ビジネス・チャンス:人々が出会い、刺激し合う場をつくるビジネス
都市の特性をビジネスに活かす
高齢者を人的資源としてとらえる
多様な人材を活かす都市づくりを進める
農山村と連携し都市の弱点を克服する
農村と連携し食の安全を確保する
山村と連携しウッドタウン化を目指す
おわりに
・ハードウェアとソフトウェアとともにヒューマンウェアを重視すること
・将来を予測し、リスク管理の視点からロバストな準備をしておくこと
・地域の個性や地域の主体に応じてボトムアップで個性的な都市をつくること
参考文献