9月11日から今日までの東京の日照時間は6時間だそうですが、当地でも似たような天気が続いています。『耕作放棄地活用ガイド』(『現代農業』2009年11月増刊号、農文協)に掲載されている嶺田拓也さんの「耕作放棄地の植生はどのように変わっていくのか」(72~79頁)を読みました。耕作放棄された田んぼの植生遷移が土壌の乾湿の影響を受けているらしいことは、岩殿D地区、F地区で確かめられます。

 耕すとは自然植生を撹乱すること
 ほとんどの田んぼや畑などの耕地は、自然の植生が成立していた場所を改変して整備された。
 植生の移り変わりを遷移と呼び、溶岩流など新しく形成された裸地を始点とする場合を一次遷移というのに対し、耕作や火事、洪水などによって撹乱された場所で起こる遷移を二次遷移と呼んでいる。
 しかし、植生に対する耕作の影響は自然由来の撹乱要因と比べても大きいとされ、人為の加わっていない耕作以前の植生は、気候の変動や地形変化など長期スケールの影響も受けながら、もっと自然条件に適応した植生が存在してきたと考えられている。また、耕作行為は耕起や除草によって、強制的に植生を二次遷移初期に後戻しさせている作業の連続とみなすことができる。
 耕作放棄とは、それまでの人為的な圧力が消失・軽減することを意味するため、耕作放棄時を始点とする新たな植生の遷移が見られることになる。耕作にともなう管理をまったくやめてしまった耕作放棄地では植生遷移が進行し、やがて潜在自然植生(ある土地からいっさいの人為的作用を停止したときに、その時点でその土地が支えうるもっとも発達した植生)へと移行していくと考えられている。(72頁)

 放棄後の植生には地下水位が大きく影響する
 一般には、耕作放棄地の遷移の方向性は土壌の乾湿に大きく影響を受け、地下水位が低く土壌が乾燥しやすい畑地跡などの場合には、一年生雑草からススキやセイタカアワダチソウなどの多年生草本、そして潅木林を経て、周辺地域に見られるような木本群落へと進む。
 湿田跡のように湧水が絶えず流れ込み、地下水位が高い場合には、一年生中心の水田雑草群落が1~2年見られた後、ヨシ・ガマなどの湿原性の多年生草本群落がしばらく続き、やがてハンノキやヤナギなどの湿地林に移行していく。
 また、西日本では、竹林の管理もままならなくなっているため、耕作を放棄すると竹林に飲み込まれてしまう事例も増えてきている。
 耕作放棄後の年数と植生との関係は、周辺からの種子の供給や立地条件などにより異なるが、多年生草本群落の成立以降は穏やかに変化していく。また、耕作放棄地では作物との競合や除草など耕作に伴う淘汰圧がないため、周辺からの種子供給と埋土種子の存在の有無も植生の移り変わりを決定する主な要因となる。(73~74頁)

 木本の進入を抑えるかどうかで再生のコストが大きく変わる
 植生遷移が進行し、コナラやハンノキなどの木本が優先するようになった耕作放棄地では、畦畔の形状が崩れるなど再び耕地として再生することが難しい。(74~75頁)
 木本の進入を抑制して効率よく雑草植生を維持するためには、少なくとも年1回程度の刈払い管理と5~10年内に一度の耕耘管理の必要性を読みとることができる。(77頁)
 放棄水田を「生きものの宝庫」にするための管理
 耕作放棄地では耕作時の履歴も反映しながら遷移が進んでいくが、木本の侵入を抑えるような最低限の管理を行っていけば、絶滅危惧種を含む多様な植生が見られる可能性がある。多様な植生にはさまざまな生きものが集う「生きものの宝庫」として機能するため、新しい地域資源の供給源として耕作放棄地を位置付けることもできるだろう。(79頁)