多自然川づくりの事例としてとりあげられることが多い境川は、東京都、神奈川県を流れ相模湾に注ぐ2級河川です。上流部は概ね東京都と神奈川県の境を流れており、かつての武藏国と相模国との国境を流れることから境川、八王子街道(大山街道、国道16号線))が境川をわたる橋は両国橋、橋の南側にある宿は橋本(相模原市緑区橋本地区)と命名されています。

島谷幸宏『河川環境の保全と復元 多自然型川づくりの実際』(鹿島出版会、2000年)は多自然川づくり分野の基本図書です。
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「第4章保全・復元の際の基本的考え方」にのコラムで川の蛇行部と河畔林を残すことができた例として境川が取り上げられています。

 コラム6 治水計画と自然環境保全の例(境川)
 現在の環境が良好な場合は、その環境をどのようにして保全するのかが重要となる。河岸に河畔林が残っている境川を例に考えてみたい。境川は神奈川県と東京都の境界の洪積台地上を開削して流れる、神奈川県が管理する掘込み河川である。以前は相当の区間で河畔林があったが、現状では2㎞の区間のみが河畔林が存在する区間になっている。また大きな蛇行部が存在することも特徴である。この河畔林の保全をめぐって、河畔林管理者である神奈川県と境川の斜面緑地を守る会の間で議論がなされた。当所の計画案は計画流下能力60立米/秒を確保するために河道を直線化し、断面の拡幅、護岸を設置する計画であった(図4-1)
 当所の改修計画のインパクトとしては、河畔林やニリンソウなどの林床植物の生育地になっている天然河岸の消失、魚類のハビタットとしての重要な湾曲部の喪失かあげられる。これらのインパクトは、河畔林からの落ち葉や落下昆虫など餌物質を減らすことにもつながり、エネルギーフローにも影響を与える。また河畔林の伐採は、光環境を変え林床植物に影響を与える。元凶の環境が良好なときのインパクト軽減策としては、回避、低減が基本である。境川では、なるべく蛇行部や河畔林を残すことを基本に、いくつかの代替案に対して流下能力の詳細な検討がなされ、天然河岸の強度がどのくらいあるかを調べるためのボーリング調査が行われ、蛇行部分がほとんど残ることになった(図4-3)。一部河畔林が伐採される林床植物は移植されることとなったが、河川沿いの樹林地の樹木を間引き光環境を改善してから移植することとなった。(39~40頁)
図4-1 当初案(河道の直線化、断面の拡幅、護岸の設置により、天然河川の湾曲部が消滅する)
図4-2 ショートカット案
図4-3 決定案(川の蛇行と河畔林を残すことができた。黒い部分が拡幅する部分)
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境川は図の右側から左側に流れ、右側に国道16号線、両国橋、中央の蛇行部に計画された「管理橋」は現在、「横町橋」となっています。
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「多自然型川づくり」は型がとれて現在は「多自然川づくり」となり、『多自然かわづくりポイントブックⅢ 中小河川に関する河道計画の技術基準;解説 川の営みを活かした川づくり ~河道計画の基本から水際部の設計まで~ 』(日本河川協会、2011年)で、境川は18、29、30、55、97頁などでとりあげられています。

NPO法人境川の斜面緑地を守る会のホームページ