昨日、東松山県土整備事務所(河川砂防部)と比企の川づくり協議会の打ち合わせ会議がありました。配布された比企の川づくり協議会事務局の活動記録を読むと、都幾川「石倉見学」と里川たがやし作業(2015年5月6日)があり、石倉設置による生き物の棲み家づくり、隠れ場所づくりが行われていることや川たがやしによる魚類の餌になる水生昆虫の増殖や産卵場所を提供する試みが実施されていることが分かりました。
埼玉県漁業協同組合連合会のHPによると、2014年8月29日に埼玉県水産多面的機能発揮対策地域協議会(埼玉県漁業協同組合連合会が主体)がときがわ町の都幾川新玉川橋下流に於いて魚類資源の保護を目的とした石倉の設置実演会を開催し、その後11月10~13日、都幾川流域地区活動組織(埼玉県、武藏漁業協同組合が主体)が、ときかわ町玉川地区の都幾川の岸沿いの水中に、プロショップ白石、平生産森林組合、明善友好会の協力を得て「石倉」を設置しています。その取り組みは2015年5月25~29日11月16~18日、20日にも継続されています。

ウグイのマヤ漁(秩父・柴崎精助さんの話)石倉漁(栃木県鹿沼市荒井川漁業協同組合)石塚漁(川尻稔「千曲川に於ける石塚漁業に就て」1952)、ウナギをとる石倉かご(蛇カゴ+石倉漁法、「石倉かごの設置で河川環境は改善する」)など伝統的な漁法が、現在では「内水面水産資源の生育又は内水面生態系の保全に資する取組」に継承されています。




雑魚をめぐる水産業(片野修『河川中流域の魚類生態学』(学報社、2014年)「第11章河川中流域の水産業とその未来」178~180頁)
 河川中流域において、アユが水産業にとってもっとも重要な魚種だとすれば、ウグイ、オイカワ、フナ類などは雑魚といわれる魚である。しかし、これらの雑魚も地域によっては欠かすことのできない役割を担ってきた。私の住む長野県では、海がないために、川や湖の魚は貴重な蛋白源として古くから利用されてきた。信濃川や天竜川に大型ダムが造られ、サケ・マス類やアユの遡上が妨げられた後には、その内水面水産業はアユやサケ・マス類の法流か雑魚の漁獲に頼らざるをえなくなった。これらの河川では、4~5月にはアユ種苗を放流し、6~10月には成長したアユを漁獲する。したがって、アユが成長するまでの期間は、渓流域に生息するヤマメやイワナのほかには、コイ科の雑魚を利用するしかない。渓流魚の放流は活発に行われているが、それは主に遊漁のためである。これに対して、ウグイやオイカワは漁獲の対象となり、川魚料理店や河川敷の小屋などで提供されて入る。
 雑魚のうちウグイは、投網などでも捕獲されるが、長野県では「附場」と言われる人工産卵場におびきよせて漁獲する手法がよく知られている。【以下付場の解説部分略】
 1950年には上田市と旧丸子町を管轄する上小漁業協同組合の管内で合計18tのウグイが漁獲され、そのうち約30%は附場で漁獲されたいた。このほか千曲川では、投網、曳網、四ッ手、釣りなどの漁法でウグイが漁獲されていたが、とくに興味深いのは石塚漁法である。この漁法では、水の流れがあり砂礫底で、水深が1.2~1.5mほどの場所に、人頭大あるいはその2~3倍の大きさの石をまんじゅう型に積み重ね、石塚をつくる(川尻、1952)。石塚の高さは90㎝、底部の直径は1.8~2.1mほどであった。水が流れる一ヶ所を除いて他はワラで覆い、その上に平石を並べ、砂礫で目つぶしをして、そのまま1~2ヶ月放置する。魚は隠れ場所を求めて自然に石の間に入るというわけである。捕獲の際には石塚を網で囲ってから、その中にもんどりや網を入れて回収する。
 石塚は千曲川だけで1,000個を超えて設置されたことがあり、1個の石塚で魚が350㎏以上捕れたこともあったらしいが、1930年代の初めには多くても70㎏くらいに減ってしまったという(川尻、1952)。一般的に10月~12月頃に石塚を設置して、1~3月に魚を捕獲した。この漁法は魚が捕れすぎるという理由で、1946年以降11月1日から4月1日までの間禁止されるようになり、現在では通年禁止されている。
 ウグイ漁業は、長野県に限らず群馬県、埼玉県などの内陸県で盛んに行われ、1940年代の始めには全国で2000~2500tの漁獲があった。石塚漁法は千曲川では行われなくなっており、附場の数も上田市全域で、10ヶ所余りに減少してしまったが、そこで捕れたウグイは現在でも河川敷の附場小屋で利用されている。
 オイカワは千曲川では昭和4年に始まった琵琶湖産アユ種苗の放流にともなって拡まり、漁業の対象種として利用されてきた。中村(1952)によると、オイカワの漁獲量は1940年代にはウグイとほぼ同量であり、多い年には千曲川全体で60tにも達していた。オイカワの移入により生態系にマイナスの影響が生じたという報告はなく、偶然に移入したとはいえ、千曲川の水産業には大いに寄与したと考えられる。投網などで漁獲されたオイカワは、唐揚げや白焼き、甘露煮などに調理され利用されてきた。雑魚といわれるオイカワやウグイが、かつて大量に漁獲され利用されてきたことは明らかであり、それはアユとともに内水面の漁業を支えてきたのである。

人工産卵床について水産庁HPの内水面に関する情報より
  内水面漁業・養殖業をめぐる状況について

  コイ・フナの人工産卵床のつくり方
  ウグイの人工産卵床のつくり方
  オイカワの人工産卵床のつくり方

  渓流魚、アユ、コイ・フナ、ウグイ、オイカワの人工産卵床の増殖指針(PDF:725KB)
   産卵場を河川に1ヶ所設置すると稚魚放流の何匹分に相当するか、造成経費の比較