奥啓一、香川隆英、田中伸彦編著『森林景観づくりガイド ツーリズム、森林セラピー、環境教育のために』(全国林業改良普及協会 2007年)の「事例Ⅳ 森林景観づくり事業の実践」(田中幸雄)。

 森林景観づくり事業―地域ニーズに応えた事業実施―
  はじめに/森林景観づくり/森林景観整備事業の合意形成
  森林景観整備事業の内容/おわりに

はじめに
 ・森林景観づくりとは何か
 ・事業の合意形成はどうすればよいのか
 ・事業の実施内容は何か
 ・事業の進め方や実施上の留意点は何か

森林景観づくり
 ・景観
  景観は「どこから」「何を」見るかが重要
 ・森林景観
  森林や山などの自然からなる景観だけではなく、それらに道路や橋などの人工物も含んだ総合的な景観として森林景観をとらえる(展望台からの眺望)

 景観づくり(景観整備
  ・見通しの確保
    「どこから」「何を」見るかを決めて、見通しを遮る樹木だけを伐採、それ以外はできるだけ残す
  ・視点の設定及び眺める場所の整備
   視点の設定=眺める場所を決める
   眺める場所の整備(見通しの確保に劣らず重要)
    ベンチを置く、説明板を設置する、ゴミを片づける、周りの藪を整理する
    眺める場所が分かるよう案内標識を設置する
   
   樹木については
    ①見通しを遮る樹木の伐採
    ②藪の整理
    ③林縁の樹木の伐採が重要
 ③は、眺める場所の近くの林縁に茂った草木を取り除いて林内が見通せるようにし、林内感を高めてやること。林内感とは林の中にいると感じられることであり、林縁にいても林の中が見通せると得られる。林内感があると人は安らぎを感じることができる。
  ・眺める対象の整備
    眺める対象の整備は概して難しい(多くの時間と労力)
    森林整備と森林景観整備の違いをよく認識して行う(景趣木の植栽は慎重に)

森林景観整備事業の合意形成

 関係者からなる検討会を設置し、議論する
 現地で検討会を開催する
 マスコミを辻手市民に情報発信する

 森林景観整備検討会の設置および進め方
 ・検討会委員の構成
 ・検討会の進め方(事業者が事業内容などを説明し、それについて議論する、3~4回)
  ①森林景観づくりの考え方
  ②現地(事業予定地)の状況、特に景観上の課題
  ③事業の内容(景観整備、特に見通しを確保するための伐採)
    「どこから」「何を」眺めるのか、見通しを遮る木はどれか
 ・説明の内容と主な意見
   「景観」および「森林景観」
   「見通しを確保するための伐採」
   「藪の整理」
   「林縁木の伐採」(眺める場所に面したところ) 実際にみて話合う
 ・マスコミを通じた情報発信
   PR文書の作成
    ①森林景観整備をキーワードとしてPRする
    ②事業内容が正しく伝わるよう努める
    ③表題(タイトル)を工夫する
   マスコミへの情報提供

森林景観整備事業の内容
 ・既設の展望台からの見通しの確保
 ・眺める場所の設定およびその整備

 事業の進め方
  ・事業のスケジュール
  ・伐採にあたっての留意点
 ①伐採は、葉が茂っているときで、かつ観光客の少ないとき、すなわち6~7月か9~10月に行う。落葉すると見通しを遮る木が解りにくくなり、また、見通し確保の効果が実感できなくなるので、避けた方がよい
 ②伐採する木が多いときは、伐採を2回以上に分けて行う。伐採した木は片づける。
 ③伐採手は少人数とし、時間をかけて行う。
おわりに