小池恒男さんの『博士たちのエコライス -いのちをはぐくむ農法で米作り-』を読みました。琵琶湖岸の平場の圃場での米作り8年間の奮闘記で、耕作放棄された谷津田を再生し、市民の利用に供するという「岩殿市民田んぼ事業」を推進している岩殿満喫クラブとして、「ビジネスモデル」として検討、活用していきたいと思いました。

滋賀県立大学環境ブックレット8 小池恒男『博士たちのエコライス -いのちをはぐくむ農法で米作り-』(サンライズ出版、2015年7月、83頁、800円)
農学博士たちが大学近くの田んぼを借りて、無農薬で化学肥料を使わない「理想の農法」での米作りを始め、学生たちも田植えや草刈り、収穫などに初チャレンジ!利益之出る農業をめざした8年間の奮闘の記録。

1 稲のごく「普通」の作り方
慣行作のバリエーション
私にとっての稲の慣行作
そして今日のいわゆる慣行稲作

2 「いのちをはぐくむ農法」とは何か
農法とは何か
稲作を取り囲む自然環境
私たちがめざした稲作とその農法
 -開出今教育研究圃場プロジェクトのめざしたもの-

3 ざっと見、稲作の1年
稲作の基本にある圃場の整備
 -田んぼがなければ稲作はできません-
開出今の圃場がかかえていた問題
稲作にとっての水と土
元肥施肥から収穫作業まで

4 ビジネスモデルは実現できたか
収量はどのように推移してきたか
食味なんてあてにならないか
なぜ経営成果が問われるのか

5 私たちがめざした農法とその評価
何ができて何ができない
冬季湛水はなぜ行きづまった
不耕起栽培はなぜ行きづまった
紙マルチ田植え技術

6 米作りは誰にでもできますか
「自家栽米」について考える
わが家ではどれだけお米を食べるか
「自家栽米」は可能か
「マイ田んぼ」「オーナー制度」という形もあります
 -「可能な限り自ら生産に取り組みましょう」という呼びかけについての意味-
生活空間や山々と混在してある日本の田んぼ
日本農業の比較優位から見えてくるもの

7 あとがき
冒険の記録、絶望の記録、驚きの記録、そして希望の記録
お世話になったみなさんへ

私たちがめざした稲作とその農法
 ー開出今教育研究圃場プロジェクトのめざしたもの-
●農法としての成立と経営としての成立
 開出今[かいでいま]教育研究圃場プロジェクトの基本は、2.40㏊の水田[20a区画の圃場2枚、30a区画の圃場4枚、40a区画の圃場2枚]で、無化学肥料・無農薬・、通年湛水・不耕起(収穫後の田畑を耕さずに種をまいたり苗を植えたりする。土壌浸食の防止や作業の省力化などの利点がある)等を内容とする農法での稲作栽培です。同時に、このような農法による稲作が経営的に成立するものでなければ現実的な意味は半減するわけですから、もう一つの課題としては、当然のことながら経営としての成立条件の確保が求められます。つまり、農法としての成立と経営としての成立という二つの条件についての検討が求められます。
 さらに、農法の課題に加えて付随的技術として、慣行作より作期を遅らせる(田植えの時期を、慣行作の5月初旬を6月初旬に)、疎植にする(苗箱採用量を慣行作の22箱を16箱に、1株1~2本植え、株間・畝間広幅植え)技術の採用があります。
 経営としての成立という課題にかかわって、生産されたお米の特長(セールスポイント)としてさらに主として消費者向けには、①犬上川の冷たい伏流水で育てた、②無化学肥料・無農薬で育てた、③「魚のゆりかご水田」[ニゴロブナ]で育てた、④「花咲く景観水田」[畦畔に花を植えつけ]で育てた、⑤良食味を求めて育てた、等々の点をアピールすることにしました。
 そしてビジネスモデルとしてわかりやすく、①「いのちをはぐくみ農法」で、②単收(10a当たりの収穫量)8俵(480㎏)とって、③食味80以上を獲得して(静岡製機食味計)、④1俵3万円で売る、の四つの目標をかかげることにしました。「いのちをはぐくむ農法」とは、ここでは無化学肥料・無農薬と通年湛水・不耕起栽培の二本柱の技術的条件と、二つの付随的技術と、五つのセールスポイントのすべてを含む概念として設定しました。……(20~21頁)

●「自家栽米」はもともと農家でない人の「わが家で食べるお米の栽培」のこと(68頁)

●年間1人当たりのお米の購入数量は25㎏(2013年、「家計調査年報」)。10a当たり480㎏(8俵)の収量だとすると、5人家族で3.5a(35m×10m)の広さの田んぼがあれば十分。(69頁)

●「自家栽米」は可能!
 この程度の耕作であれば、トラクターも、田植機も、コンバインも要りません。すべて手作業で可能です。耕起も代かきもトラクターがなくても手作業でできます。田植えも、稲刈りも手作業で可能です。乾燥は「はさ架け」でよしとして、精米も近所にあるコイン精米でできます。残るは苗と収穫後の籾摺り(籾から玄米にかえる工程)です。苗は買い求めるとして、問題は籾摺りですが、この作業は近くの大規模農家に任せるのが一番です。
 ということで、大型機械のないことが米づくりのできない理由にはなりません。また「田んぼがないから」も、「わが家で食べるお米の栽培」ができない理由にはなりません。なぜならば今日では、田んぼを貸してくれる人が周囲にたくさんおられるからです。むしろ問題は3.5aの小さな田んぼをさがすのがむずかしいということかもしれません。まわりを見渡せばほとんどの田んぼは圃場整備されていて、サイズは30a(30m×100m)とかなり大きいのです。……(69~70頁)
●「自家栽米」を成り立たせる七つの条件
……自家栽米に取り組むということになりますと、まず田んぼがなければなりません。加えて、作業(農業機械)、先立つ資金、栽培技術、用水の確保、「集落農政」等々の壁をクリアしなければなりません。しかし、あれやこれやの工夫と柔軟な対応が求められますが、結論として言えることは、「自家栽米」はできるということです。肝心なことは、あたりまえのことですが、原点として「やりたい、やり抜く」という強い意思があることです。意思まで加えますと、「自家栽米」を成り立たせる七つの条件です。その上であえて確認をしておきたいのは、地域に維持されている本隊としての稲作があってこその「自家栽米」だという点です。「自家栽米」はあくまで「コバンザメ」栽培であって、本隊の稲作あっての「自家栽米」です。(71頁)