クロ 横浜市・港北ニュータウン郷土誌『都筑の民俗』(港北ニュータウン郷土誌編纂委員会、1989年)86頁~87頁
クロ ここでいうクロとは田の畦のことである。これは田の境であり、田の水の漏水をふせぐ土手であり、さらには田の歩道でもあった。そのため、それらの役目にたえるため、十分に仕上げておかなければならなかった。
 作り方には二つの方法がとられた。一つはモトグロと称される旧年のクロをクワ(風呂鍬)でもって完全に崩し、その土をクロネカシといって、水分をふくませるように一日放置した後で、新規に台形状のクロを築く方法である。他の一つは、モトグロの表面に生えた草をクサカリガマでもって刈り取ったのち、クワでもって、表面の土を削りとり、そこに十分に水分をふくんだ土をクロツケといって貼りつけていく方法である。
 その仕上げはクワでクロの傾斜面を強く押圧しながら形成していくが、このクロヌリができれば一人前と評価された。なかでも段差のある谷戸のヒャッタでのそれはむずかしく、かなりの技術を要求され、百姓の腕のみせどころとされていたが、初体験のころは、仕上がったと思い後を振向くと、クロは直線ではなく曲がったり凹凸[おうとつ]があったりして、さんざん笑いの種にされたという。
 なお、クロのなかに、麦藁を入れてより正確な田境の証とした話も伝わっている。
風呂鍬とは(ウィキペディア「鍬」より)
 ……昔は鉄が高価で貴重であったので、木の板で刃を作り、刃先のみに鉄を接合した。刃の木製部分を風呂と言い、風呂鍬と風呂なし鍬との2種類があった。
 風呂鍬は、風呂、刃、柄の3部を明確に区分でき、平鍬、台鍬ともいう。打引鍬に属し、整地、中耕などに用いられる。京鍬、江戸鍬、野州鍬、南部鍬、相馬鍬などが属する。構造が堅牢であり、砂質壌土地に適する。
 風呂なし鍬は、金鍬(かなぐわ)ともいい、風呂と刃とが鉄板1枚でできている。打ち鍬に属し、開墾や重粘土地の耕耘に適する。……