豆腐の製造法には、水につけてもどしておいた大豆を磨砕機(石臼・グラインダー・ミキサー)ですりつぶして生呉(なまご)を作り、加熱した呉をしぼり、豆乳とおからに分ける加熱しぼり製法(煮取り法)と、生呉を煮ないで豆乳をしぼりとる生しぼり製法があります。沖縄では生しぼりが主流です。中国や韓国では生しぼりが広く行われています。日本本土の豆腐づくりの主流は加熱しぼりなので、「生しぼり豆腐」は製法にこだわった豆腐としてネットでは多数派です。
「老後は故郷で「生搾り」」(『朝日新聞』2014年12月26日)という新聞記事には、「今の主流は先に豆を煮て搾る製法だ。豆乳が多く取れ、時間もかからないが、2人は『甘みがすっきり出る』と生搾りにこだわる。/材料は富山産大豆と立山連峰から流れる水、能登半島の塩田でとれた天然にがりだけ。できたてを口に含むと濃厚な甘みが広がる。』とあります。ほかに、「・・・オカラ込みで煮る従来法では、焦げたオカラ臭や味の悪いサポニンも溶け出すので、オカラをしぼった後加熱する生しぼり法や最初に皮などのオカラ成分を除く方法など、技術としては実に多様な方法がある」(『朝日新聞』夕刊掲載「変わる食品」、1990年4月16日)、「・・・生しぼりという、水に浸した大豆を煮ないで石うすで引く、独特の製法で作る風味豊かな豆腐・・・」(『朝日新聞』夕刊掲載「らうんじ」、1992年4月10日)付朝日新聞夕刊との記載があるようです。
ネットでは、「こだわりの“生絞り製法”により大豆のうまみを100%引き出しました」(兼氏食品のHPより)など生しぼり派、「むかしづくりへの想い」(毘沙門堂本舗のHPより)という加熱しぼり派のこだわり豆腐製造業者のサイトがあります。「江戸時代の文献によると、豆乳を作る前に加熱する方法(「加熱しぼり」)で豆腐が作られていたことがわかります。同じ頃、中国では豆乳をしぼった後で熱を加える方法(「生しぼり」)で作られていました。/2つの方法のうち、「加熱しぼり」の方が大豆のたんぱく質を無駄なくしぼり出せます。また、大豆をすりつぶすと、含まれている油分が酸素によって急速に酸化してしまいます。これを防ぐためにも、「加熱しぼり」が有効なのです。」(日本豆腐協会HPの「豆腐の原料・作り方」より)は加熱しぼり派でしょうか。

『豆腐製造法の2つの流れ 生しぼりと加熱しぼり 〜美味しさと品質を追及する〜』(フードジャーナル社、2011年3月、全34頁)という税込み648円で販売している電子書籍があります(フードジャーナル社は大豆加工食品総合専門誌『月刊フードジャーナル』の発行元)。目次を紹介しておきます。豆腐の製造法に関心のある方は購入をおすすめします。

   まえがき
   1. 歴史的な経過 ー生しぼりから加熱しぼりへー
     後漢の豆腐作りは加熱しぼり
     日・中・韓の豆腐作りの歴史
     生しぼりから煮とり(加熱しぼり)への変化
   2. 生しぼりと加熱しぼりの比較
      (1) 歩留まり
      (2) 粘度、硬さ
      (3) 青臭み
      (4) 不快味
      (5) 香気成分、風味
      (6) 熱変性、豆乳管理、おから
   3. 豆腐製造の標準化(加熱しぼり/もめん豆腐)
      (1)「ご」、豆乳の加熱温度と凝固物の性状
      (2) 加水量
      (3)「 ご」の加熱温度と抽出・凝固の状況
      (4)「 ご」を煮る時間と抽出・凝固の状況
      (5) 豆乳の凝固条件
      (6) 大豆の水浸漬
   4. 生しぼりによる豆腐製造
     事例1 間接釜でムラ煮えを防ぐ
      事例2 無浸漬製法との組み合わせ