岩殿D地区の上の段にもセイタカアワダチソウの群落があります。8月18日に刈払機でかりました。
ここは、D地区の下の段と比べると草丈はさらに低く、花序をつけているものはほぼありません。
※セイタカアワダチソウの刈り取り管理
山口裕文編著『雑草の自然史 ~たくましさの生態学~』(北海道退学図書刊行会、1997年) 第Ⅰ部雑草フロラの成立 第4章人間の影響下に成立する生物的自然、草本植生のダイナミックス(前中久行・大窪久美子)
セイタカアワダチソウの分布拡大成功仮説“無駄の効用”
セイタカアワダチソウは、河川敷き、法面などに広範囲に分布する北アメリカ原産の帰化植物である。晩春から冬にかけてセイタカアワダチソウの地上部各器官および地下部現存量が、調査されている。また、同時に、時間をかえて刈りとった場合の地下茎への蓄積の影響も調査されている(図3、4【略】)。
セイタカアワダチソウの葉量は7月にはほぼ最大値に達するが、その後も草丈が伸長し新葉の展開が継続する。しかし、下位の葉は落葉していくので、葉量はほぼ一定に保たれる。光合成生産の葉、地上茎、地下茎への配分をみると(表2【略】)ほとんどが地上部の成長へのみふりむけられている。花穂が出現し、新葉の展開がとまる秋の初めまで、一方で葉を展開しつづけ、これに相当する下位葉を落としつづける。地下部重の増加はこの時期にようやく始まる。地下部への蓄積も光合成器官の増加もない期間が夏を通じて継続する。これはセイタカアワダチソウにとって無意味な期間のように思われる。原産地である北アメリカと日本とでは、セイタカアワダチソウの生長に影響を及ぼす温度と日長の組合せが異なるために、春の生育開始から花穂出現が行われる条件に達するまでの期間、すなわち栄養生殖の期間の長さが異なることが、このような期間が存在する要因となっているのかもしれない。原産地とは異なる地域へ伝播した帰化植物が遭遇する状況としては起こりうることである。セイタカアワダチソウが日本において分布域を拡大できた条件として種子生産力や散布力、ロゼットでの冬越し、アレロパシーなどさまざまな要因がいわれている。しかし前述した、長くつづく栄養成長期の存在も関係するかもしれない。すなわち、葉量が最大限に達した後も、セイタカアワダチソウの草丈の増加がつづくために、日本原産の植物よりも上層をおおうことになり、結果的に日本原産植物よりも、光合成で有利な空間を占めることになる。一方、日本の温度や日長条件に適応して発達してきた日本原産の植物は、“無駄”に葉を展開しつづけるというような特性は獲得していないので、競合に敗れることになる。
地下部への再蓄積が始まる以前に、光合成器官を取り除かれた場合には、地下部に残された貯蔵養分を使って再び光合成器官の再生を繰りかえす。このために刈りとり後のセイタカアワダチソウの地下部重は図4【略】のように減少する。地上部の生長にふりむけた地下部の貯蔵物質が回収される以前に、再び刈りとりが行われると貯蔵物質の収支が負となることになる。6月から9月までに時期をかえて刈りとった場合の生長シーズンのおわりにおける地下部の現存量は、地下部への蓄積が開始される8月に刈りとったときにもっとも小さくなった。
もし、草地の刈りとり管理として、セイタカアワダチソウの繁茂を抑制しようとすれば、6月に1度刈りとり、その後の地上部の再生によって地下部の蓄積養分を消費させ、さらに地下部への養分の蓄積が始まる9月ごろ再度刈りとるのが効果的であると考えられる。
なお、刈りとりを行なった場合の開花状況は、以下のようであった。無刈りとりの場合、9月に草丈190㎝に達し、伸長を停止した。開花の最盛期は10月中旬であった。6月刈りの場合、開花時期はほぼ同じであったが、開花期の草丈は約90㎝であった。7月刈りは11月上旬に開花し、草丈が約60㎝であった。8月刈りでは開花期が約1ヵ月遅れ、花序はさらに小型化した。9月刈りではわずかに再生したんのみで花序はつけなかった。(52~55頁)
岩殿D地区の下の段のセイタカアワダチソウを刈り取りました。前回7月23日から2ヵ月ぶりです。10月18日に刈った岩殿F地区上段のものよりは、小型で開化が遅れていました。
※井手久登・亀山章編『緑地生態学』(朝倉書店、1993年)4.2 草地の植生管理(前中久行)
(4)草地の植生管理の手法 b.刈取り
刈取りの時期や間隔の効果は植物季節と関連する。たとえば一年生の好ましくない植物については、種子が成熟する以前に刈り取ることで防除できる。
多年生の草本植物は一般に次のような生活サイクルをもつ。すなわち、前の生育期間に地下部に蓄えた貯蔵物質を用いて春に急激に葉や茎を増大させて初期生育を行う。この期間においては地下部の重量は減少する。その後、展開した葉によって光合成を行い、光合成産物を地上部器官の拡大に振り向ける。地上部の拡大に必要な量以上の光合成が行われた場合は、これを地下部に回収蓄積して次の成長期間に備える。これよりも短い間隔で刈取りを繰り返せば、その植物は持続されず、より短期間に貯蔵物質を回収できる植物種と置き換わることになる。
セイタカアワダチソウでは地下部の蓄積は8月以降にはじまる。それ以前では光合成生産の50~60%が葉へ振り向けられる(前中・平田、1982)。地下部の再蓄積が始まる以前に、光合成器官を取り除かれた場合には、地下部に残された貯蔵養分を用いて光合成器官を再生させる。このために刈取り後のセイタカアワダチソウの地下部重は図4.11【略】のように減少する。地上部の成長に振り向けた地下部の貯蔵物質が回収される以前に刈取りが行われると貯蔵物質の収支は負となる。6月から9月まで時期を変えて刈り取った場合の成長シーズンの終わりにおける地下部の現存量は、地下部への蓄積が開始される8月に刈り取ったときに最も小さくなった。
また刈り取る時期によってその後の成長や開花・結実の状況も異なった。すなわち6月刈や7月刈では、無刈と同じ時期に開花し、花序、草丈ともに小型化したために、鑑賞にも適している。8月刈では開花期が約1か月遅れて花序はさらに小型化する(図4.12、4.13)【略】。9月刈ではわずかに再生したのみで、開花しなかった。これらの結果からセイタカアワダチソウの消滅を目的とする場合には、6月に1度刈り取り、その後地上部の再生によって地下部の蓄積養分を消費させ、さらに地下部への養分の蓄積がはじまる9月ごろに再び刈り取るのが効果的である。またある程度成長を抑制し、開花させるためには、6月または7月ごろ刈り取るのがよい。この場合に枯れ草を取除く目的で、11月中旬以後に再び刈り取ることが望ましい。(153~155頁)
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